TIA/minor Stroke疑い例に広くMRIを含む精査を行うべき根拠

Non-consensus TIA (めまいのみ、構音障害のみ等)も古典的TIA症状同様に危険である。The Oxford Vascular Study (OXVASC) by Tuna MA and Rothwell PM, 2021

 これまでTIA診断のGold StandardとされてきたNINDS-CVD分類第III版(1990年)では、1つの血管系の閉塞で説明がつく下記のような症状の突発をTIA(脳卒中の前触れ発作)とし、抗血栓薬の投与を直ちに開始すべき緊急症としてきました(古典的TIA症状)。

運動麻痺突発する一過性の1か所またはそれ以上の身体部位(顔面、腕、手、足)に起こる運動麻痺
言語障害突発する一過性の表出性または感覚性またはその両者の言語障害
感覚脱失突発する一過性の2か所またはそれ以上の身体部位(顔面、腕、手、足)の感覚障害
半盲または4分の一盲突発する一過性の視野の一部に起こる視覚障害(同名半盲または4分の1盲)
単眼性視覚障害突発する一過性の単眼性視覚障害
めまいプラス他のTIA症状とともに突発する一過性のめまい
複視プラス他のTIA症状とともに突発する一過性の複視
構音障害プラス他のTIA症状とともに突発する一過性の構音障害
失調プラス他のTIA症状とともに突発する一過性の失調
Classic TIA(古典的TIA)症状

 この診断基準では、めまいのみ、構音障害のみといった「独立した非進行性かつ陰性の単一症状の突発(sudden onset of isolated non-progressive negative monosymptomatic events)」はTIAと診断しないとされてきました。しかし、このような症状(Non-consensus TIA症状)を呈した患者でも拡散強調MRIで梗塞巣が見られたり、脳梗塞に移行したりする症例が経験されるようになり、Non-consensus TIA症状の取り扱いが問題と考えられるようになりました。

めまいのみ       突発する新規の非再発性めまい単独症状(悪心嘔吐の有無は問わない)、頭部運動や外傷によらない、かつ耳痛、耳鳴り、難聴が随伴しない、非特異的ふらつき(dizziness)や立ち眩みの原因が除外されている
失調のみ突発する一過性の歩行不安定、他の原因がない
複視のみ明確な眼科疾患や神経筋疾患のない、突発する一過性の複視のみ
構音障害のみ 突発する一過性の呂律障害のみ
両側視力低下のみ 突発する一過性の随伴する陽性症状を伴わない両側視力障害(半盲4分の1盲は除く)
一部のみの感覚障害 突発する一過性の1つの身体部位(顔面、腕、手、足)に限定された一側性感覚障害
non-consensus TIA(NINDS-CVD第III版で、TIAとはしないとされた神経脱落症状)その特徴は「独立した非進行性かつ陰性の単一症状の突発(sudden onset of isolated non-progressive negative monosymptomatic events)」である。

 英国・オックスフォード大学のMaria A. Tuna氏ら(2021年Lancet誌)は、英国オックスフォードシャーの住民(9万2,728人、年齢問わず)を調査し、古典的TIA症状を呈した者とNon-consensus TIA症状を呈した者のその後の脳梗塞発症リスクを明らかにしました。その結果、Non-consensus TIA症状90日後の脳梗塞発症リスクは古典的TIAのそれと(10.6% vs 11.6%)同様であり、両者ともに脳卒中の前触れ発作として考える必要があることが明らかとなりました。
 本論文の要旨は以下の通りです。

背景:TIA診断は困難なことが多い。古典的症状(例えば、運動麻痺、言語障害、構音障害半盲、単眼の視覚障害など)についてはTIA症状とするコンセンサスがあるが、突発する非進行性の局所性陰性症状単独 (例えば、複視、構音障害、めまい、失調、感覚障害、両側視覚障害等の単独発作)についてのコンセンサスはなく、知見や治療にはばらつきが多い。
方法:著者らは、英国Oxfordshire(人口92728人)におけるすべての脳卒中と突発した一過性神経症状を前向きに確認・調査した。症例は9か所のプライマリーケアー外来とJohn Radcliffe病院で診療されたものである (Oxford Vascular Study)。患者は、登録時に軽症脳梗塞(NIHSSスコア<5) 、古典的TIA、コンセンサスのないTIAに分けられ、 二次予防ガイドライン通りに治療された。脳卒中リスク (7日, 90日, 10年後)とすべての主要な血管イベントのリスク (初期イベントから, 医療対象となってから)を対面による受診で確定し、対象人口における年齢、性別の脳卒中発生率と比較した。
結果:2002年4月1日から2018年3月31日までに計2878例(軽症脳梗塞、 n=1287; classic TIA、n=1021; Non-consensus TIA、n=570)が登録された。追跡期間は2018年10月1日までとした (中央値5·2 [IQR 2·6–9·2]年)。 17009 人・年の間に577例が 最初の脳卒中を発症した。Non-consensus TIA後90日目の脳卒中リスクはclassical TIAのリスクと同様であった (10·6% [95% CI 7·8–12·9] vs 11·6% [95% CI 9·6–13·6]; ハザード比 0·87, 95% CI 0·64–1·19; p=0·43),また一過性黒内障後のリスクより高かった (4·3% [95% CI 0·6–8·0]; p=0·042)。しかし、classical TIAに比べ、 Non-consensus TIA患者は発症時に医療の対象となることが少なかった (336 of 570 [59%] vs 768 of 1021 [75%]; odds ratio [OR] 0·47, 95% CI 0·38–0·59; p<0·0001)。また、医療的対象となる前に再発を来す傾向があった (45 of 570 [8%] vs 47 of 1021 [5%]; OR 1·77, 95% CI 1·16–2·71; p=0·007). そのような再発性脳卒中を除外するとNon-consensus TIAは、医療的対象となった後の7日目の脳卒中リスク(2·9% [95% CI 1·5–4·3])は、背景のリスクから予想されるリスクよりなお十分に高いリスクを有していた (relative risk [RR] 203, 95% CI 113–334)。特に、対象となる発作の当日に医療の対象となった場合 (5·0% [2·1–7·9]; RR 300, 137–569)よりリスクは高かった。Non-consensus TIA患者における、すべての主要な血管イベントの10年後のリスクは、古典的TIAのそれと同程度であった (27·1% [95% CI 22·8–31·4] vs 30·9% [27·2–33·7]; p=0·12)。Non-consensus TIAと古典的TIAで、心房細動、卵円孔開存、血管狭窄の有病率は同程度であったが、後方循環系の血管狭窄はコンセンサスのないTIAにより多く見られた (OR 2·21, 95% CI 1·59–3·08; p<0·0001)。
知見の解釈: Non-consensus TIA患者は、早期の脳卒中リスクと長期の脳卒中リスクが高く、心血管系の疾病所見も古典的TIAの初診時と同様であった。Non-consensus TIAを明確な脳血管障害と位置付ければ、全TIA診断は約50%増となるであろう。

 彼女らの論文(Fig2、3,4)には、classic TIA, non-consensusu TIA (症状別)、 minor stroke等のKaplan-Meier曲線が示されていますので原著をご参照ください(Copy rightのためリンクのみとしております)。この様に、NINDS-CVD分類第III版(1990年)以来続けられていた、めまいのみ、失調のみなどの症状はTIAとはしない」という対応は今日では行うべきではないと考えられます。

TIA/minor strokeを初療時鑑別の第一に挙げることのない様な症例であってもMRIで17%(6人に1人)に脳梗塞の所見が得られ、DWI陽性の場合梗塞発症リスクは高い。by Whiteley WN et al. Stroke, 2022

 問診と診察のみをもとに素手で戦わねばならない初療医にとって、「どのような症状があれば脳卒中の前触れ発作とすべきなのか?」という問いは、極めて重要なClinical Questionです。
 くも膜下出血を例にとって臨床神経診断学のお話をすれば、対象は「頭痛を主訴に来院した患者」で、医師は問診と診察からくも膜下出血の「確からしさ(pre-test probability)」を評価します。単に頭痛の性状だけでなく、十分情報が得られない等の条件も加わりますので、その時点の確からしさを0から1までの数値で表現したり、definite, probable, possible等大雑把に分類する方法も用いられます。診断が不明確であればCTや髄液検査などの補助診断を行って検査後診断の精度を高めます(post-test probability)。では、「突発した一過性の神経機能障害を呈した患者(ACVS)」の場合は同でしょう。拡散強調MRIは、急性脳虚血病巣検出の感度、特異度が極めて高く非侵襲的で、微小脳出血(microbleeds)や閉塞血管の有無の評価も可能ですから、施行可能な状態にあるのなら広く行うべき検査と考えられます。特にTIA/minor strokeは発作後48時間以内に脳梗塞に移行する可能性が高い疾患ですから、初療医がとるべき行動はACVSのPre-test probabilityに基づいて後方の画像診断可能な専門医への適切なスピード感を持った紹介となります。TIA/minorstrokeらしくないという初療医の見立て(Pre-test probability)が正しければ、そのような患者群のMRIでDWI(+)となるものはほとんど見られないはずです。逆に初療医の見立て(definite, probable, possible)にかかわらずDWI(+)がどれも見られるのであれば、初療医のとるべき行動はワイドトリアージでできるだけ広くMRI検査を受けさせるべきことになります。
 英国エジンバラ大学の Whiteley氏らは、様々な教育訓練レベルの初療医がTIA/strokeを疑って、その疑いの強さをprobable, possible, uncertainに分けた後MRIを施行して、初療医の診断確信度別に急性梗塞出現頻度を検討し、初療医診断がpossibleやuncerteinであっても17%、20%の症例に急性梗塞の所見が出現することをStroke誌(2022年)に報告しました。この結果から、MRI医療資源が十分あるのならACVS疑い例を含み広くMRIが施行できる体制をとるのが適切であると考えられます。幸い日本は世界一のMRI機器保有国で、フリーアクセス国民皆保の国ですので、ACVSの初療の点では世界で最も恵まれた環境にあるといえます。

 この研究では、事後にMRIの結果を知らない脳卒中専門医が、NINDS-CVD第III版の診断基準によるTIA/stroke、国際頭痛分類による片頭痛、両分類には入らない局所症状、ABCD2スコアをカルテをもとに再診断してみたところ、血管症候群に基づく旧来のTIA診断におけるDWI陽性率は42%と高かったとしています。しかし専門医がnon-focalな症候と診断した者にもMRIで急性梗塞の所見がなお見られたことは、ACVS診療においてはACVSではないと否定し去るのではなくワイドトリアージの姿勢で臨むべきことを示唆しているものと思われます。

専門医事後診断MRI(<5d)の急性梗塞出現率
TIA/stroke (n=95)*42%(95%CI:32-53)
Migraine (n=38)†11%(95%CI:3-25)
Focal (n=99)‡16%(95%CI:10-25)
Non-focal (n=29) 3%(95%CI: 0-18)
Other (n=10) 0%(95%CI: 0-26)
*NINDS脳卒中分類第III版の基準、†国際頭痛分類第III版の基準、‡前2基準にあてはまらない局所神経症状 カルテreviewによる事後診断

本論文の要旨は以下の通りです。

背景: 一過性または軽度の神経症状を呈する患者にMRIを施行する価値は不明である.本研究では一過性または軽度の神経症状を呈する患者にMRIを施行すると、どの程度の割合で急性梗塞巣が出現するか、TIAまたは軽症脳卒中の臨床診断の確率別に明らかにする。
方法:救急及び外来で、一過性または軽度の神経症状を呈した患者群を対象とした。様々な訓練レベルの医師が患者のTIA/strokeの診断確率をMRI施行前に、probable(鑑別診断としてTIA/strokeが最も考えられる)、possible (TIA/strokeの可能性はあるが、最も考えられる鑑別診断ではない)、uncertain(診断確率を決めかねる)に分けて診断し、MRIは 1.5 Tまたは3T で発症5日以内に施行した。また事後にMRI結果を知らない状態で臨床症状をNINDS-CVD分類に合致するTIA/ stroke、 国際頭痛協会基準による片頭痛前兆、非TIAの局所症状、非局所性症状に分けた。MRIは2名で判読し、脳卒中は少なくとも90日時点18か月までで確認した。
結果: 272例 (女性47%,年齢 60±14歳)が研究に参加し,その58%が MRIを2日以内施行、大半(92%)が 局所症状であった.MRI検査で急性虚血病巣が描出される率は、Stroke/TIAの臨床診断確率が probableの例で、75例中23例 (31% [95% CI, 21%–42%]); possibleで151例中 26例 (17% [12%–24%]);  uncertainで43例中 9例 (20% [10%–36%])であった。NINDS基準による TIA/strokeであったものでは、95例中40例 (42% [32%–53%]); 片頭痛前兆の診断では38例中 4例 (11% [3%–25%]); 非TIAの局所症状では 99例中16例 (16% [10%–25%]); 非局所性症状では 29例中 1例 (3% [0%–18%])であった。MRI施行後には、施行前の抗血小板剤使用より 14例 (5% [95% CI, 3–8]) 多く抗血小板剤が開始となるものと思われた。18か月までにMRIで急性脳梗塞所見があった患者の61例中 9例 (18%)に新たな脳梗塞が出現し 、なかったものからは211例中2例 (1%) (年齢調整ハザード比, 13 [95% CI, 3–62]; P<0.0001)出現した。
結語:一過性または軽度の神経症状を呈し、初期診断が脳卒中/TIAではない、または診断不明(uncertain diagnosis)とされた患者6例中約1例にMRIで急性虚血性病変が見つかった。この集団におけるMRIの臨床的有効性、費用対効果を明らかにする方法が求められる.

DOUBT 研究 by Coutts S, et al. JAMA Neurology 2019;76:1439

 TIAは50年以上の長きにわたり血管症候群の病歴をもとに診断するものとされてきました。このため、明確な運動障害や言語障害を呈する患者については、直ちに専門的評価が行われやすい傾向がありましたが、これ以外のnon-focalあるいは病歴が不確かなvague symptomといった例は、緊急対応の対象になりがたい状態が続いていました。本当にそれでいいのか?というClinical questionに対する国際共同研究DOUBT研究が行われ、著者であるCoutts氏らは、そのようなTIAかも?と思うような症例に対しても早期にMRIを施行することの重要性を論じています。
 DOUBT(the Diagnosis of Uncertain-Origin Benign Transient Neurological Symptoms)研究の対象者は、低リスクの一過性または軽度の症状を呈し、発症8日以内に紹介された年齢 40歳以上、非運動障害、非言語障害のminor focal neurologic eventまたは 過去に脳卒中歴のない5分以内の言語障害からなる1028例です。これらにMRI(DWI)を施行したところ 139例 (13.5%) に急性梗塞の所見が得られ、MRI施行により308例 (30.0%) の初期臨床診断が覆ったというものです。年間脳卒中発症率は 7例 (0.7%)でしたが、 DWI(-)例に比べDWI(+)であることは、1年後の脳卒中発症が6倍以上(相対リスク6.4;95% CI, 2.4-16.8)と高く、DWI(-)であることの脳卒中発症陰性的中率は 99.8% であったとし、このような低リスクTIA患者や軽度の神経症状の患者の評価にMRIは特に有用であるとしています。

Coutts SB, et al. Rate and Prognosis of Brain Ischemia in Patients With Lower-Risk Transient or Persistent Minor Neurologic Events. JAMA Neurol. 2019;76(12):1439-1445
本論文の要旨は以下の通りです。

重要性: TIA患者の早期治療により脳卒中リスクは低下する。しかし患者の多くは診断不明の症状を呈する。運動、言語または遷延する症状の場合、患者は脳梗塞発症の高リスクであり多くは包括的な精査が行われるが、より低いリスクの患者は大雑把な評価を受ける傾向にある。
目的: 拡散強調MRIで急性梗塞が見られる頻度を明らかにする(DWI positive)。
デザイン、条件、参加者: The Diagnosis of Uncertain-Origin Benign Transient
Neurological Symptoms (DOUBT) 研究は、低リスクの一過性または軽い症状で神経内科を発症8日以内に紹介された1028例を対象とする国際共同多施設前向き観察研究である(患者登録期間:2010.6.1-2016.10.31)。 患者は40歳以上で、持続時間を問わない非運動または非言語の軽症局所神経症状または持続時間5分以内の運動or言語症状で過去に脳卒中既往のないもの。
暴露因子:脳MRI施行(発症≦8日)前に詳細な神経学的評価を行うこと
主要評価項目と方法: 主要評価項目はDWIの急性梗塞の所見
結果: 1028例 (女 522例、男 506例;年齢 63.0± 11.6歳)を登録した。この内DWI陽性であったものは 139例 (13.5%)であった。 MRI施行により最終診断は308例 (30.0%)で変更となった。1年以内の脳卒中発症は 7例 (0.7%)であった。DWI陽性であることは、脳卒中発症高リスクに関連していた (1年後の相対リスク, 6.4; 95% CI, 2.4-16.8) 。DWI陰性であることは脳卒中発症において99.8%のnegative predictive valueと計算された. 多変量解析で高齢 (odds ratio [OR], 1.02;95% CI, 1.00-1.04), 男性 (OR, 2.03; 95% CI, 1.39-2.96), 運動または言語の症状(OR, 2.12; 95% CI, 1.37-3.29), 評価時点での症状の持続 (OR, 1.97; 95% CI, 1.29-3.02),
no prior identical symptomatic event (OR, 1.87; 95% CI, 1.12-3.11), and 初療時の神経学的評価で異常であった (OR, 1.71; 95% CI, 1.11-2.65)が、有意な因子であった。
結論と妥当性: この研究はTIA及び伝統的に低リスクと考えられていた症状を呈する患者もMRIで急性梗塞の所見を呈するという重大な急性梗塞のリスクを有することを示しており、早期にMRIを施行することは明確な診断を売るために必須である。

TIA/minor Strokeの画像診断、各国のガイドライン

 
TIA/minor strokeを疑う患者にどのような画像診断を行うべきか、各国の臨床ガイドラインの記載は医療資源、保険医療体制の違いを反映して実に様々です。

英国 The National Institute for Health and Care Excellence (2019)

 総合医(GP)がゲートキーパーとなって専門施設への紹介を受ける仕組みの英国では、かつてGPの診察でABCD2スコア≧4であれば24時間以内に、それ以下なら7日以内に専門施設に紹介しCTなどが受けられるという体制でしたが、2019年のガイドライン改定でABCD2等の判別力の低いツールで診断を遅らせることは有害でありこれを用いたトリアージはしない様大改定が行われました。しかし現在でもTIA疑い例への画像診断の推奨文は「CT施行で別の診断があると臨床的に疑わない限り、TIA疑い例にCTを依頼してはならない」「TIAクリニックで専門医の評価後に、虚血領域の決定または出血やその他の病態を明らかにするためにMRI(DWIを含む)の施行を考慮する」と抑制的な使用とする旨の記載になっています。これはMRI台数が人口100万人あたり7.2台(日本は55.2台)、CT台数が9.5台(日本112.3台)という日本とはかけ離れた英国の医療環境を反映するものと思われます。

カナダ Canadian Stroke Best Practices.2020

 カナダのCanadian Stroke Best Practices. Triage and Initial Diagnostic Evaluation of
Transient Ischemic Attack and Non-Disabling Stroke(2020 updated)
では、下記の通り症状と発症からの時間に基づいて患者を層別化し、いつどのように専門施設に送るかを決定している。

Very high riskの場合は緊急で画像診断(CTまたはMRI)をCTangiography等の血管評価とともに可及的速やかに、かつ救急病棟を退出する前に行う様推奨しています。特にMRIを施行するなら7日以内のDWI陽性が確認可能な時期に行う様推奨し、MRIは特にlow risk患者の有効であるとしています。

ESO(The European Stroke Organisation )ガイドライン2021

 欧州脳卒中機構(ESO)の2021年版ガイドラインでは、TIA患者は24時間以内に専門の評価を受けるべきこと、トリアージにおいてABCD2スコア等の単独使用は行わないこと、画像診断の施行の在り方については十分なエビデンスがなく推奨はできないが、エキスパートオピニオン(9人中8人が合意)としてMRI(multimodal)またはCT perfusionが可能であれば単純CTよりも来rを推奨すると記載しています。

米国 AHA ガイドライン2021

 米国AHA 2021年のガイドラインでは、脳卒中またはTIAを疑う患者には診断確定のためCTまたはMRIが推奨されるとし、もし初回のCTまたはMRIで脳梗塞巣が検出されなかった場合、再度CT または MRIを施くして診断を確定することは理にかなっていると記載しています。

日本のガイドライン2021

 日本のガイドラインは脳卒中治療ガイドラインとして記載されていることから、治療に主眼が置かれておりTIA/minor strokeの適正な診断の在り方等についての記載はない。

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